Madly in Love 【リヴァイ】【進撃の巨人】
第19章 恐怖
あれは確か、夏の日照りが続く時だった。
父様と母様と、フードを目深に被って、人通りの少ない道を歩いて街に来ていた。
その頃の街……というより、ある貴族の領地と言った方が正しいのだろう、そこにしか母様の薬が無かったのだ。
母様は病気を患っていた。ウォール・シーナ内で密かに暮らしていた私達にとって、医者などを呼ぶのは自分達の居場所を知らせることになるし、かと言って薬を飲まないわけにも行かない。
その薬が、唯一置かれているのがシーナ内の、貴族の領地でもあるその街だった。
毎年、一年に一回、身を隠しながら家族全員で来た。
母様も私も力が弱かったため、家に一人でいる時に攫われたら守れないから、と父様は、いつも私達を守ってくれた。
ある夏の日、リヴァイ達と会う4、5年程前だろうか
父様が薬を急いで買っていると、私は____まだ、子供だったのだ。何も知らず、純粋無垢な子供が、きらきらした店のショーウィンドウに惹かれないはずがない。
母様も父様も見ていないことを確認して、こっそり少し離れた所の店のショーウィンドウに魅入っていた。
「……君、名前は?」
急に、隣で同じくショーウィンドウを眺める人が答えた。
憲兵団に注意するように言われていたが、この人は上等な服を着ているだけで、全く兵士のように見えなかった為、名乗ってしまった。
「…………ルージュ」
が、少し疑った私は咄嗟に、ショーウィンドウの中にあるプレートに書いてあった言葉を使って偽名を言った。
その人は名を聞くとにやりと笑った。