Madly in Love 【リヴァイ】【進撃の巨人】
第12章 845
何が、格好悪いだ。
すばらしく格好良かった。
ああいう口調からして、偉い人達ではあるのだろう、だがそれを腕を掴んだだけで撃退してしまった。
何と格好良いのだろうか。
そう思うと同時に、エレンの胸には調査兵団に入るという思いが深く刻まれ、そして自由を勝ち取るために今から行動する、と決心した。
だがその行動も、今の無力な自分には、足を蹴ることしか出来ないような自分には到底出来ないとミカサに気付かされたエレンは、泣きながらパンを頬張った。
生きるために。 巨人を駆逐するために………
「ステラ、お前急に飛び出していったから何事かと思ったろうが」
「ごめんなさい、いても立ってもいられなかった……何も守れず、何も変えれなかった手前、彼らの前に顔を出すことも躊躇われたけど……でも、あの子の痛みをそのまま放っておくなんてできなかった」
様子見として、密かに避難民たちの元へと来ていたリヴァイとステラだった。
卑劣な兵士の言葉と、齢わずか10歳で巨人への憎しみと復讐に燃えた少年の心の痛みを、叫びを見殺しにできなかったステラは、いきなり走り出したと思ったら久々に怒りを露わにして怒った。
何事かと驚いたリヴァイだったが、昔地下街で自殺しようとした少年を平手打ちしてまで止めたステラを思い出し、こいつのこの優しさを超える者はないだろうな、と静かに悟った。
と同時に、リヴァイも無力な自分に打ちのめされるステラと同じ気持ちであったため、苦しげな顔をするステラの頭にぽん、と手を置いてしばらく2人で沈黙に浸っていた。
そして、手を握って兵舎へと戻っていった。
この手だけは離れぬように、固く握りしめて。