Madly in Love 【リヴァイ】【進撃の巨人】
第12章 845
壁が壊された翌日、エレン達は食料庫で目を覚ました。
「エレン、大丈夫?」
覗き込んで心配するミカサに、父さんと会っていた気がする、と答えるエレンは、自分の記憶がおかしいとでもいうように頭を揉んだ。
アルミンがエレンとミカサの分のパンまで持ってきてくれていた。
「これが一日分だって…壁の外側に住んでいるほど大事にされないんだ、」
「はっ、なんでよそモンのために俺たちの食料を…
どうせ巨人が出たんなら、もっと食って減らしてくれればよかったんだ」
一人の兵士がそう言うのを聞いたエレンは、ついカッとなって足を蹴った。
「見たことも…ないくせに!巨人が、どうやって人を…!」
瞬間、その兵士が手をあげようとしたが、エレンとその兵士の間に誰かがすっと入り込み、兵士の腕を掴んだ。
マントで顔が隠れていて誰なのか分からない。
「おやめ下さい。皆に醜態を晒す気ですか」
静かに言い切ったその声には怒りが充ちていた。
「何を…お前みたいな女、すぐにでもひねり潰して…!」
「捻り潰してほしいのなら今すぐにでも実行しましょう。それをお望みでないならばこれ以上彼らに関わらないで下さい」
ぐっ、とその人は兵士の腕を握り、兵士は痛みで顔を歪めて思い切り腕を引き抜き、舌打ちをして去っていった。
その人はエレン達を人混みから遠ざけると、マントをとって言った。
「ごめんなさい、格好悪いところを見せて……」
あの銀髪の女の人だった。吸い込まれそうな美しさに、3人ともつい見入ってしまった。
その人は口を開き、何かを言おうとしたが思いとどまり、切なげな顔をしたかと思うと、3人それぞれの頭を撫でてから、エレン達がお礼を言う暇もなく去っていった。