第18章 信頼の絆
勇姫は真っ暗な世界に居た。
ぼんやりと見える己の手はとても小さかった。
――あれ、わたしの手、こんなにちいさかったっけ?
声が聞こえる。
ねーたん…ねーたーん……
――ああ、いかなきゃ。あの子たちのところへ…
ゆっくり歩き出す。が、声がどこから聞こえるのかよくわからない。周りを見回す勇姫。
すると、目の前に大きな白い階段が現れた。
「これをのぼればいいのかな…?」
てっぺんが見えないその階段を、小さな足で登り始める。
「いち、にい、さん、しぃ、、、」
数えながら登る。
「……、にーじゅう、にじゅに、にじゅご、、、」
だんだんと数が怪しくなってくる。
「……、さんじゅさん、、、あれ、わかんなくなっちゃった。」
勇姫は登るのをやめて、その場で止まった。
すると白い階段はフッと消えた。
勇姫はそのまま地面に落ち「あたっ!」と悲鳴を上げた。
勇姫は立ち上がり周りを見る。
「…またまいごになっちゃった。」ふぅ、と溜息をつく。
『お前はすぐ道に迷う』頭に響く声がする。
――…だれ?
『だから、手を引いてくれる人間を、お前は探していたんだろう』
――なんのこと?
『ほら、よく聞け。聴こえるはずだ』
――とうさん?…や…へい?え、やへいって、だれだっけ…?
『お前を導く声を辿れ』
――わたしを、みちびく、こえ…?
遠くに、赤い光が見える。光の中から、声が聞こえた。
『………っ!……き…ろっ!……起きてくれっ!勇姫!!!』
その瞬間、暗闇は晴れた。《あそこだ》勇姫の心が告げる。弾かれた様に、声のする方へ走り出した。
綺麗な河を挟んだ向こうに、家族が居た。笑ってこちらを見ている。
「勇姫、立派だったぞ。強くなったな」
「いい人に出会えて良かったわね」
「ねーたん、だいしゅき」
「ゆいもー」
思わず足を止めそうになる。
「止まるな!走れ!」父親が叫んだ。
「そのまま、真っ直ぐに駆け抜けろ」
「…っ、はい!」
「いつも一緒にいるからね」
「はいっ!」
「ねーたん、だいしゅきー」
「ゆいもー」
「私も…っ、私も大好きだよ」
涙が止まらない。
でも、前へ行くんだ。振り返らずに、走れ!
光に飛び込んだとき「幸せになりなさい」と聞こえた――