第18章 信頼の絆
―――…手応えが、ない!
驚く炭治郎。
確かに切った。が、身体は切れることなく、炭治郎の火だけが勇姫の身体へと入っていった。
目には星のような光りを、体には燃え盛る火柱を纏う勇姫。
すぅ…と一息吸い込み、病葉を見つめて刀を真横に構える。
その瞬間、病葉は己の危険を悟ったのか、逃げるように動いた。
「!!!」
いち早く反応した炭治郎。日輪刀を病葉の足を狙って投げつける。
地面すれすれを高速回転する炭治郎の日輪刀は病葉の足に突き刺さった。炭治郎の投擲は些細なダメージでしかなかったが、体勢を僅かに崩したその一瞬は、勇姫にとって十分な隙となった。
炭治郎の隣から、急にフッと勇姫が消える。
目で追える速さではなかった。
声だけが夜の山に響いた。
「信頼の呼吸!」
気付くと、勇姫は既に病葉の眼前にいた。
「―――――――……絆っ!!!!!!!」
勇姫は真横に構えていた刀を、病葉の首元目がけて振り抜いた。星の光と赤い烈火が、刀と同じ軌道で大きく燃え広がり、爆音を上げた。
衝撃波が辺り一面に広がり、
病葉の首が、飛んだ。
―――…切った!
炭治郎の見つめる先には、倒れる病葉。そして、その側で同じように倒れる勇姫の姿が目に映った。
「……勇姫っ!!!」
駆け寄る炭治郎。
すぐさま勇姫を抱きかかえる。意識がない。
心音が弱い事に気付き、血の気が引いた。
―――…何故だ。技は成功しなかったのか。
いや違う。大丈夫だ、信じろ。
「勇姫!勇姫!聞こえるか、戻ってこい!」
―――…信じろ、信じろ。大丈夫だ。
自分に言い聞かせながら、炭治郎は勇姫を呼び続けた。
夜平も側に寄ってきて、炭治郎に抱かれている勇姫を嘴でつつく。
死なないでくれ、勇姫。
約束しただろ…――――
炭治郎は涙を流しながら、勇姫を強く抱きしめて叫び続けた。