第15章 喧嘩
炭治郎が部屋に戻ると、善逸が駆け込んできた。
「炭治郎!大変だ!勇姫ちゃんが男に言い寄られてる!」
「…知ってる。聞こえた。」
「聞いてたのかよ。…おい、どうすんだよ。」
「…何が?」
「何がってお前、聞いてたんだろ。」
「どうするもなにも、勇姫はちゃんと断ってた。」
「断ってはいたけどさ…その……」
そこで会話を区切る善逸。
「冨岡さんと勇姫の間には何もないよ。…断る口実だろ。」
自分に言い聞かせるように炭治郎は言う。
ただ、話しながら苛々と不安が胸に渦まいていく。
男に求愛されていた事、義勇を好きかと問われて否定しなかった事、自分と勇姫との間にある絶対的な力の差……
全てが負の方向へと炭治郎を誘う。
「ごめんください」と声が聞こえ、勇姫は屋敷に入ってきた。勇姫は、入るよー、と言って部屋の戸を開けた。
「具合はどう?」といつもの彼女だ。が、勇姫はすぐに炭治郎の様子がおかしいことに気が付いた。
勇姫は驚いて、心配そうに「どしたの。炭治郎。」と一歩近付く。
すると炭治郎は「別に」と言ってベッドからするりと降り、勇姫の傍らを通り抜けて部屋を出ていってしまった。
「え…?」
目も合わせてくれない炭治郎に勇姫は何がなんだかわからない。炭治郎が出ていった扉を見つめて呆然とする。
そんな勇姫を見て、善逸は溜め息をつく。
――…炭治郎、ガキすぎるだろ。