第15章 喧嘩
那田蜘蛛山での戦いが終わった後、柱合会議やらなんやらがあってどたばたしたが、炭治郎はめでたく生還して、蝶屋敷に入院することになった。
戦いから三日後の夕方、勇姫がお見舞いに来た。
「良かった、皆生きてて。」
目に涙を浮かべて部屋に飛び込んできた。
山では一言も会話を交わさなかった炭治郎と勇姫。あの冷たい、ととれなくもない彼女の態度を少し気にしていたのだが、勇姫はいつも通りに戻っていた。
「もっと早く行ければよかった。
そしたら炭治郎も善逸も、こんなに酷い怪我をしなくてすんだかもしれないのに。
到着が遅れて、ごめんね。」
と、しょんぼりする勇姫。
「いやいや、冨岡さんと勇姫が来てくれなかったら、俺は死んでた。本当にありがとう。」
炭治郎がお礼を言う。
「勇姫ちゃぁーん!会いたかったよー無事で良かったよー。山に入ってきてたんだねぇ。」
「うん、善逸とは会えなかったね。立派に戦ったの、偉いよ。」
「勇姫はもう次の任務にいってるのか?」
「うん。一日休んで、昨日からね。」
「怪我はないのか?」
「正直、疲れはあるけど。怪我はないよ。」
あれだけの戦いで無傷って、どんだけ強いんだこの子…しかも勇姫たちは、一つ前の任務からの連戦だったのに…
青ざめる炭治郎と善逸。
「そんな大変な仕事をやってる訳じゃないから、大丈夫だよ。油断さえしなければ、ね。」
にこりと笑う勇姫。
そして、沈黙をし続ける伊之助に目を向ける。
「伊之助は大丈夫なの…?」
「ある意味、大丈夫じゃない、かな。」
「……そうみたいだね。」
勇姫は伊之助のベッドに近付く。
「伊之助、お疲れ様。よく頑張ったね。
あの戦いで死ななかったんだから、凄いよ。
助けに行けなくて、ごめんね。」
声をかけると物凄い声で「イイヨ」と聞こえた。
こりゃぁいろいろ重症だわ、と思う。
勇姫は少し屈んで伊之助に顔を近付け、猪の頭を撫でた。
「よしよし。ゆっくり休んで身体も心も回復しなね。」
炭治郎は、伊之助を撫でる勇姫を見て、自分の心がモヤモヤするのを感じた。
同時に、自分はいつからこんな嫌な奴になったんだ、と反省する。
全身の筋肉痛より、心が痛んだ。