第2章 絆の始まり
―――――しばらく夢の中にいた気がする。
おかしいな、夢はもう見ないはずなんだけど。
良い夢も悪い夢もなんの得にもならない。
だってそうでしょ?
そんなの、何の解決にもならないんだから。
――――――
うっすらと目を空けると天井があった。
そして、自分の体は布団で寝ていることに気が付く。
回らない頭でゆっくりと現状把握に努めていると、障子がすっと開いた。
「お目覚めですが、鬼狩り様」
目だけ声の方向に向けると、小さなお婆さんが勇姫に声をかけていた。
はい、とか、ここはどこですか、とか言いたいことはあったが、口が渇いていて声が出ない。
魚のように口をぱくぱくさせるだけだった。
ならば、と身体を起こそうとすると、びきっと音がするくらい右肩が痛んだ。
いや、びきっ、などと軽い音がではなかったかもしれない。
ぼぐしゃぁぁっ!くらいの衝撃だった。
声は出せないが、痛みを逃がすために反射的にひゅぅっと息を吸う。
息を吐くと同時に、冷や汗がどっと吹き出した。
何これものすっごく痛い、というのが、まごうことなき今の気分を表す最良の言葉だった。
「動いてはなりません。傷がまだ塞がっておりません。」
お婆さんはそう言って、枕元に来て、お水をゆっくり飲ませてくれた。
そして、額に手を当てて「まだ熱が高うございますなぁ…」と言い、「安静でございますよ」と念を押して下がっていった。
入れ替わりに医者も来て、苦い薬を沢山置いていった。
勇姫の目尻に溜まった涙は、痛みのせいか、熱のせいか、はたまたこの薬のせいか。
……全部のせいな気がする。
この日は一日、お婆さんの「安静でございますよ」
を聞かされ続け、布団から出られなかった。
殆ど眠っていたこともあるが。
うとうとしながら、ここへ私を運んでくれたのは誰だろうと考えていた。
まぁ今は回復が先だ、と回復の呼吸をしながら勇姫はまた深い眠りに落ちていった。