第11章 得手不得手
伊之助の「ちび助」発言に、「おい、ちび助は勇姫ちゃんに失礼だろ。」と善逸が注意する。
「はぁ?ちび助はちび助だろ。こいつ、ぜってー俺らより年下だろ?」
「だから、ちび助とかこいつとか言うなってーの!…あ、そういや、勇姫ちゃんっていくつなの?」
善逸が聞くと、あ!と手を打つ勇姫。
「そうそう!私、炭治郎に言わなきゃって思ってたんだけどさ。前に私、十五歳くらいって言ったじゃん?あれ、違ったの。」
テヘヘと笑う勇姫。
「あのね、この前胡蝶様のところに行った時、診療記録?とかいうの書くから生まれ年教えてって言われたのね。で、言ったら、私十四歳だって!びっくりしちゃった!実は十六歳くらいかなーとか思ってたのに。衝撃だったわー」
勇姫の話を聞きながら、
…ん?
と首を傾げる炭治郎と善逸。普通、生まれ年を知っていたら自分の歳を間違えることはないだろう。
「はあ?何だお前自分の歳も数えられねーのかよ。俺でもわかるぜ。さては、お前馬鹿だな!」
「は?な、なによー!何で伊之助に馬鹿呼ばわりされなきゃいけないのよ!」
からかってくる伊之助に、珍しくむきになる勇姫。
あれ…
これは、もしかして……
「……勇姫は、ひょっとして、算術が苦手…なのか?」
やや遠慮がちに聞いてくる炭治郎。
うぐっ…
「そういえば勇姫ちゃん、呼吸使う時も型の番号言わないよね…数字が全般的に覚わらない…とか?」
うぐぐっ…
「あ、前に素振りしてた時、こいつ途中から数おかしくなってたぜ。」
ぐぐぐっ…
三人からの連撃を受け、自ら掘った墓穴にどんどん埋まっていく勇姫。
しん、となる裏庭。
「…苦手な事は、誰にでもあるでしょ。」
小さくボソリと呟く勇姫。
その可愛らしさに、ぷっと吹き出す炭治郎と善逸。
「笑わないでよー!」
「ご、ごめんごめん。」「別に、隠さなくてもよかったのに。」
伊之助は爆笑して
「お前馬鹿だったんだなー!しかも十四かよ!ガキだなー!」とからかう。
「馬鹿じゃないもん!ガキじゃないもん!」
そして、
「ガキだから、そんなに胸がちっせーんだな!」の伊之助の一言で、
「胸は、関係、ないでしょー!!!」とブチ切れて部屋に帰っていってしまった。