第11章 得手不得手
朝から庭で元気に鍛錬する少年少女。
流石に三対一だと勇姫も苦戦する。
が、男子組の調子良かったのも初めのうちだけで、時間が立つにつれ、攻撃パターンが読まれ始める。
体力差も出てきて、攻撃の質も鈍る。
苛々が募り、「くっそーっ!おらぁっ!」とぶん投げた伊之助の武器が、スコーン!と小気味良い音を立てて当たった。…善逸の頭に。
「ぷぎゃぁっ!」という声を出して、善逸はそのままズシャァッと倒れた。伊之助の投げた太い木の枝が、カランと善逸の傍らに落ちる。
そこで今日の鍛錬は終了となった。
善逸の後頭部に出来た大きなたんこぶに、濡らした手ぬぐいをそっと当てる勇姫。
「…伊之助、投擲はいい作戦だけど、味方に当てちゃ駄目だよ。」
「ふん!コイツが悪いんだ。ちょろちょろ動きやがって。」
「こら、伊之助。善逸が起きたら謝るんだぞ。」
「嫌だ!」
今日も勇姫に一撃も当てられなかったので、伊之助は完全に拗ねている。
炭治郎と伊之助が「謝れ!」「嫌だ!」を繰り返してると、「…ぅう…ん」と善逸が目を覚ました。
「善逸!…良かった。」と勇姫がホッとしたように声をかけると、がばっと起き上がって「勇姫ちゃぁん!酷くない?ねぇ酷いよね!何で俺味方から攻撃されてんの?あの猪まじ酷いよねっ」と騒ぎながら勇姫の腰に抱きついた。
「…おい、善逸。」頭に青筋を浮かべた炭治郎が勇姫から善逸をべりっと剥がす。
そのまま善逸を勇姫から離し「俺が手当する」と手拭いをたんこぶにベタンッと当てた。
そんなやり取りの中、「じゃ、私は走ってくるよ」と勇姫が立ち上がり「ありがとうございました。」と頭を下げた。
炭治郎と善逸も礼を取る。
こうして午前中の鍛錬は日課になっていった。
そして、三人は四日目の鍛錬で勇姫からようやく一本を取ることが出来た。
「「「うおおおおー!」」」と喜ぶ三人。
…三人ががりとはいえ、こんなに早く一本取られるとはね。
彼らの底力に、悔しさ半分嬉しさ半分の勇姫。
「明日は俺は一人で勝つ!」と、伊之助は一番喜んでいる。「こんなちび助に負け続けてたまるか!」と高らかに笑った。