第11章 得手不得手
勇姫は戸惑っていた。
朝餉を一緒に食べようと誘いに来た炭治郎が、拍子抜けする程至って普通だったからだ。
起床してから「どんな顔して会えばいいのかな…」などと、それなりに身構えていた勇姫は、
…おや?
昨日のは全て夢だったのかな?
と自分に疑いを向けてしまう程、極めて普通。
少し混乱するも、朗らかに笑う炭治郎を見てると勇姫も和み、
…ま、炭治郎が元気になったからいっか!
と、二人で並んで男子部屋へ向った。
朝餉を食べながら、
「勇姫、今日も一緒に鍛錬お願いできるか?」と炭治郎が言った。
「勝負だっ!今日は勝つ!」
伊之助も乗り気だ。
「伊之助、鍛錬ね!
うん、いいよ。でも、勝算はあるの?」
勇姫が聞くと、「ある!」「今日はボコる!」と頼もしい言葉が帰ってきた。
「伊之助、女の子にボコるとか言っちゃ駄目だ!」「ふん!コイツはいんだよ!」「コイツ、も駄目だ!」と二人が騒ぐ中、善逸が溜め息をついた。ジト目で炭治郎と伊之助を見つめている。
これだけで、なんとなく彼らの作戦が解った勇姫。
「…よし、じゃあこれ食べ終わって一刻くらい経ったらやろうか。
しっかり作戦会議しときなね。合図をちゃんと決めとかないとお互い切り合って怪我するよ!」
ピタリと動きが、止まる三人。
…共闘作戦が、もうバレた。まじかよ。
「くっそー!」
「これじゃ奇襲にならない…」
「何で解ったの勇姫ちゃん!どうして!怖いんだけどっ!」
あはは、と笑う勇姫。
「いい作戦だと思うよ。うん、大正解。三人でかかっといで。」
この洞察力の鋭さも、勇姫の強さの一つだろう。修羅場をくぐった数が彼らとは違う。
もう少し恋愛思考にもこの勘がひらめけばいいのだが、それにはそっち系の修羅場をくぐった数が足りなさすぎるのだ。
「乱闘、久々だなー。楽しみー」
と嬉しそうに米を口に運ぶ。
明らかにウキウキしている。
女子としての楽しみポイントがひたすらずれている。
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