第10章 寝顔
しゅんとなった炭治郎。
ちょっと怒っていたのに、思わず勇姫にも笑みが溢れる。
「炭治郎は本当に心配屋さんだねぇ。
そんなに人のことばっか気にしてたら持たないよ。」
心配の在庫がきれちゃうよ、なんて、くすくすと笑う勇姫。
「……勇姫だからだ。」
炭治郎はザッと音を立てて立ち上がる。
耳飾りが、カランッ…と音を鳴らす。
そのままゆっくりと勇姫の正面に回り込む。
眉を寄せ、真剣な顔をする炭治郎に、何も言葉を出せない勇姫。
「勇姫だから、心配なんだ。」
炭治郎は自分の拳をぐっと握りしめた。
「……勇姫は、俺が守る。
冨岡さんじゃない。俺が、守るんだ。勇姫を。
……強くなって、必ず。」
炭治郎の決意に満ちた表情に、勇姫の心臓はトクンと音を鳴らした。
炭治郎は勇姫に一歩近付く。
腕を伸ばして勇姫の髪に触れる。長い髪がサラ…と揺れた。
「……俺は、
勇姫のこと、ずっと心配し続けるから。
……覚悟、しといてくれ。」
炭治郎の行動に、目を見開いたまま動けない勇姫。
ただ、顔が朱に染まっていくのだけは解った。
「……おやすみ。」
炭治郎は勇姫から離れ、裏庭を歩いて去って行った。
残された勇姫。
自分の中で鼓動が恐ろしく速く刻み続けているのがわかり、善逸が言う「心臓が口からまろび出るところだった」とはこの事かと体感していた。
………何だったの?
怒ったかと思えばしょんぼりして、心配してきたり真面目な顔したり…
炭治郎に触れられた髪が、風に靡いて頬に当たる。
ねえ…、ちょっと…
心臓が壊れたんだけど……
勇姫の身体は熱を上げ続けていた。
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心拍と体温の上昇!
これでアザが出たら凄い(笑)