第10章 寝顔
勇姫の口振りから、夜這いされたのは一度や二度ではなさそうだ。
男子たちは皆口をつぐんでしまった。
伊之助ですら冷や汗を浮かべている。
その様子を見て、「え、やだ皆ちょっとちょっと、大丈夫だよ?」勇姫も焦る。
「任務の中にはさ、野営とか野宿とかよくあるでしょ?だから仮眠中とかに、ね。女子隊士は少ないからさ、狙われるよね。本当大変。やんなるわ。」
「…そうなんだ。勇姫ちゃんは俺たちにはない悩みがあるんだね。」
「階級上がってからは減ってきたけど、入隊したばっかの時は地獄。」
勇姫の苦労を知って、哀れむ男子達。
だが少女は「まあ全員半殺しにしてるから、大丈夫よ。ご法度なんて関係ない。奴らのおかげで強くなったのもあるかな。」と笑い飛ばす。
なんという逞しさ。
「けしからん奴らがいるんだな。粛清だ粛清!
でも、勇姫ちゃん可愛いんだから、本当に気をつけるんだよ。」と善逸。
「お前、力ねぇんだから、野営中はもう寝んな。起きてろ。」伊之助も心配してくれているようだ。
そんな中、何も言わない炭治郎。
その後は話題も変わり、いつも通り和気あいあいと食事をしたが、炭治郎は何か考えている様子だった。
部屋に戻り、お風呂へ行く。
湯に浸かって溜まった疲れを癒やしながら「炭治郎何か変だったな。」と呟く。
そして善逸の言葉を思い出す。
――…炭治郎は勇姫ちゃんが心配で昨日殆ど寝てないんだ
顔を湯に半分沈めながら、「…相当眠かったのかな」と勇姫は思う。ブクブクと泡が立つ。
私、そんなに心配かけたんだ。
悪いことしたかな。
炭治郎は優しいな。
でも、なんでそこまで…――
そこで、くらっとするのを感じた。いけない、のぼせる。
勇姫はお風呂を出て部屋へ向った。
熱を冷ますため、縁側で寛ぐ。
腫れている脛を筆頭に、身体のあちこちがジンジンする。明日は筋肉痛だな。
そこへ、足音。
「どしたの、炭治郎。夜這いに来たの?」
先程まで勇姫の頭を占めていた人物に、笑いかけた。
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