第10章 寝顔
「―……きろ!」
何か声が聞こえる。
「……お前ら、起きろ!」
伊之助の声に勇姫はゆっくりと目を覚ました。
「……ぅ…ん?…ん??!!!」
覚醒していくと同時に青ざめ始める。
寝ぼけ眼の炭治郎が、何故かすぐ目の前にいる。
咄嗟に身体が反応し「き、きゃぁぁぁぁ!」と叫んでズザザザと後退った。
何これ何これ何なのこれどういうことなの
頭の中はパニックだ。
一方、勇姫の叫び声で完全覚醒する炭治郎。
「えっ?勇姫?なっ、何だ?え?俺、あれ?」
しかしこちらもパニックだ。
二人とも現状が分かっておらず激しく混乱している。
「お前ら二人で寝てたんだよ。」
そこへ伊之助からの
いや間違ってはないけどそれだとお前誤解されるだろうという説明を浴び、二人の混乱はより深くなる。
――…フタリデ、ネテタ?
炭治郎と勇姫の思考は、完全に停止した。
そこへ、善逸からの助け舟。
「炭治郎も勇姫ちゃんも、鍛錬頑張り過ぎ。
疲れて寝ちゃってたんだよ。まあそうは言っても、ほんのちょっとの時間だけどな。
ほら飯来たから食おうぜ。」
そういうことか…
やや安堵する二人だったが、
寝顔を見られた…、とバツの悪い炭治郎。
男子の部屋で寝るなんて無防備すぎ…、と青ざめる勇姫。
二人とも心中穏やかではなかった。
が、美味しい食事と楽しい時間に、起き抜けのドキドキした感情は、すぐに忘れてしまったのであった。
「寝てるお前はスキだらけだったぞ。さっきなら俺は勝てた!」
「残念。殺気出されたらすぐに起きるよ私。」
「えーじゃあ勇姫ちゃんに夜這いかけらんないじゃん。」
「夜這いにきたら半殺しだよ。」
「あ、でも夜這いって、殺気出るの?別に殺す気で行くわけじゃないのに。」
「殺す気じゃなくても、夜這いには独特の雰囲気が出るからね。すぐにわかるよ。だから起きます。で、半殺し。」
ここでピタリと途切れる会話。
「……勇姫、…夜這い、されたことあるのか?」
炭治郎が冷や汗を流しながら聞く。
「え?あるよ?しょっちゅうだよ。」
さも当然であるかのように答える勇姫。
うんざり、といった感じた。
……まじかよ。
と固まる三人の少年たちに、それがなにか?と首をかしげる少女だった。