第8章 鍛錬
よかった壊れなくて、と竹刀をむにむに触りながら部屋へ消えていく勇姫。
炭治郎はその場で大の字で寝転がった。
背中に土の感触。
眼前には高い高い空。
今日もあまり天気が良くない。白と灰の雲がゆっくりと動いている。
「炭治郎、大丈夫か…?」
善逸が心配そうに聞く。いろんな意味での大丈夫か、だったが、炭治郎は「あぁ、…もう痛くない。」と答えた。
そう。
打ち込まれた所も蹴られた所も、もう痛くない。
手加減されたんだなぁ、と痛感する。
治りかけの肋には全く手出しすることなく、常に余裕の振る舞いをされた。
勇姫は今、あの雲くらいの位置にいるんだな…と思う。
そして、
落ち込んでても仕方ない!
頑張るしか無いんだ。
でも悔しい!
ならもっともっと頑張るしか無いんだ。
強くなるんだ!
己に言い聞かせて「はいっ!」と大きな声を出しながら立ち上がった。
部屋で一人、湯を使って汗を拭こうとしていた勇姫の耳に、炭治郎の「はいっ!」が聞こえた。
「……ふふ、頑張れ炭治郎。」
目を細めて、愛おしそうな顔をして勇姫が笑った。