第8章 鍛錬
正直、あまりの強さに度肝を抜かれた、というのが正直な感想だった。
想像を超えた強さ。
悔しいけれど、全く歯が立たないだろう。
でも。
ギッと拳を強く握り「お願いします!」と炭治郎は叫んだ。
「はい。いいよ。」
と勇姫は笑った。
昨日から芽生えた自分の想いに、炭治郎だって全く気付いてない訳じゃない。
でもこの差を見せつけられては男として何も出来ない。何も言えない。
だから、少しでも勇姫に近付きたい。
炭治郎が二本用意していた木刀を一本勇姫に渡すと「んー…、木刀か…」と
勇姫は口元に手を当てて考える様子を見せた。
「木刀では駄目か?」と炭治郎が尋ねると、「駄目というか…、木刀だと………炭治郎、死ぬよ?」と勇姫が答えた。その声に背筋がひやりとする。
ひいぃぃと叫ぶ善逸の声が聞こえた。
「……死んでもいい。」
炭治郎が呟いた。
「俺は強くなりたいんだ。だから、稽古つけてください。」
炭治郎は真っ直ぐに勇姫を見つめてそう言った。
…わかった。
となるのだと誰もが予想する中、
「駄目。」
と勇姫が言った。
「えええー!」と善逸が髪を逆立てながら突っ込む。「せっかく炭治郎が格好良く決めたのに!そこは空気読もうよ勇姫ちゃん!ねえ!」と騒ぐ。
「死んだら強くなれない。ちょっと待ってて。」
と自室へ走って行ってしまった。
庭に残された炭治郎の背中は、とても寂しそうだった。
ーーーーーーーーーー