第8章 鍛錬
動かない伊之助を見て、勇姫は先に動いた。
地を蹴り、一瞬で伊之助の前に飛び込んだ。腕を掴み、身体を捻る力を利用して、自分より大きい伊之助を瞬く暇もなくぶん投げた。
「!!!」
伊之助は何も反応出来ないまま投げ飛ばされた。
「受身!」勇姫が叫ぶ。
伊之助は我にかえり慌てて受身をとって着地をした。
が、すぐにまた勇姫にが迫る。
「ぼやっとしない!すぐに構えろ!」
勇姫が叫ぶ。気付くと今度は横っ腹を蹴られていた。
「攻撃を予測しろ!待つな!」
体制を立て直そうとするが、その前に勇姫が攻撃をしてくるので、伊之助は防戦一方だ。
勇姫の足払いが炸裂し転倒、
伊之助は「ぐっ…」と脇腹を押さえてそのままうずくまった。
「……もう終わり?」勇姫が言うと。
「こんのくそ野郎がー!!まだまだだぁー!!おらぁー!」と伊之助が向ってきた。
初めて攻撃に転じた伊之助に、勇姫は少し笑みを浮かべた。
伊之助は異様に低い体制で蹴りを数発繰り出した。
「なる程」と勇姫は思う。伊之助柔術はよく見ていたので、瞬時に伊之助の攻撃範囲を予想し、下、右上、左上…と、ぎりぎりのところでヒョイヒョイと攻撃を躱していく。
「くそー!!当たんねぇ!」
攻撃の距離が足りないのだと思った伊之助が、ぶんと大きく蹴りを繰り出したとき、勇姫は高く跳びはねた。
そのまま伊之助の身体を飛び越え、背後へ着地。
「はっ!」と声を出し、伊之助の背中に痛烈な蹴りを決めた。
ズシャァーと音を立てて庭に崩れる伊之助。
唖然としてる炭治郎と善逸。
勇姫は「ありがとうございました。」とぺこりと頭を下げた。
誰も動かないので勇姫が伊之助に近寄り「大丈夫?」と声をかけた。
その姿は、いつもの勇姫に戻っていた。
勇姫が伊之助の側にかがむと、「ムキー!」という声と共に伊之助は飛び起きた。
良かった。元気だ。
「ちくしょう!次は俺が勝つからな!」と息をきらしながら腕をぶんぶんさせて叫んだ。
しゃがんでいた勇姫も立ち上がり「いつでもどうぞ」と笑った。
「さてと。炭治郎も、やる?」
と勇姫は炭治郎に声をかけた。