第7章 蝶屋敷にて
裏庭に出た炭治郎は、夜空を見上げた。
あいにく今日は雲がかかっており、星は見えなかった。
湿気を含んだ風が、炭治郎の耳飾りを揺らす。
――彼女がどうしようと彼女の自由だ。
善逸の言葉が脳内をめぐる。
それはわかってる
わかってるんだ
でも、、、
たった一日合わないだけでこんなにも寂しいのは何故だ。早く会いたい、話したいと思うのは何故なんだ。
炭治郎は夜の庭を歩いて勇姫の部屋の前に来た。勇姫と初めて言葉を交わした場所。
だが今は、暗く静まり返っている。
人の居ない部屋。
そうだ。
怪我が治ってここを出たら二度と会えないかもしれないんだ。
こうして一緒にいられるのも、もう長くはない…
――だからせめて心配ぐらいしてもいいだろう。
それくらいはさせてくれ。
共に時間を過ごせる今だけは……
僅かに残る勇姫の匂いを前に、炭治郎は静かに立っていた。
余談。
炭治郎のこの痛切なる想いを、勇姫は蝶屋敷で奇跡的に受信する…なんてことはなく、
山越えの疲労もあって完全に爆睡していたのであった。
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少しずつ進んでます!
そして哀れ炭治郎!