第7章 蝶屋敷にて
義勇と別れた後、己も帰ろうと支度をしていると、アオイが来た。
「巽さん、もう夕暮れです。
今日はここにお泊まりください。」
大量の洗濯物を持ちながら、勇姫に声をかけた。
「いえ、そんな。ご迷惑をおかけする訳には…」
と断ろうとしたが、
「しのぶ様もそうおっしゃっていますので。
体力が戻っていない今、夜道で強い鬼と出くわしたらどうします。
今は負傷者も少ないので部屋は空いております。迷惑ではありません。」
と、半ば強引に押し切られて、勇姫は蝶屋敷に一泊することになった。
せめて、とアオイの洗濯物を引き受け、食事の用意も手伝った。
このくそ真面目人間は布団に入るまで働き続け、アオイも流石に閉口したのだった。
――――――
一方、藤の花の屋敷では。
炭治郎が落ち着かない様子でいた。
その様子に苦笑いする善逸。
「何かあったのでは」と繰り返す炭治郎に、「勇姫ちゃんのことだから大丈夫だろ」と善逸。しかし「でももう夜なのに」「なんで帰ってこないんだ」と炭治郎は止まらない。
やれやれ…きりがねぇな、と善逸は呆れ、
「何か予定が変わったんだろ。気にしても仕方ねぇよ。寝ようぜ。」と布団に入る。
ちなみに伊之助はもう夢の中だ。
しかし、布団の上に胡座をかき、寝ようとしない炭治郎。
溜め息混じりに善逸が言う。
「…なあ、なんでそんなに気にすんだよ。
そもそも、勇姫ちゃんの行動に俺たちが介入することなんて出来ないんだぞ。」
炭治郎は善逸に視線を向けた。
「どこで何してようが彼女の自由。俺たちに断りを入れる必要なんてない。そうだろ?」
確かにそうだ。その通りだ。…でも。
「じゃあ、勝手に心配するのも、俺の自由だ!」
炭治郎は立ち上がってそう言い、障子を開けて裏庭へ出ていった。
炭治郎の行動に「娘の帰宅を心配する親父かよ…」と呟く善逸。
まあ、父親、ではないだろうがな…と思いながら。
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耳超人は全てお見通しです。