第7章 蝶屋敷にて
食後に出されたお茶を飲みながら、
三人の女の子たちとお喋りをしていた勇姫。
女子が集まると自然に始まるもの。
そう、それは恋愛話である。
三人娘は、頬を染めながら鬼殺隊士の中で格好いい人を挙げて盛り上がっていた。
勇姫はというと…
笑みを浮かべながら聞き役に徹していた。
実は、この手の話は得意ではない。
嫌いな訳ではないのだが、何というか、よく解らないのである。
幼い頃からずっと鍛錬、鍛錬、鍛錬の毎日。
男性に対してそんなこと考えたことすらなかった。
冗談半分でふざけて話すことはあっても、がっつり話すとなると自分の経験値の低さに戦う術がなくなる。
そんな中で、急に話を振られた。
「勇姫さんは?」「慕う殿方はおられるのですか?」「教えてください!誰にも言いませんから!」
三人に詰め寄られて「えっと…」と答えに窮する。
が、興味てんこ盛りな目に見つめられて、口を開く。
「…そうですね。私は強い方が好きです。」
勇姫のその答えは三人娘の求めていたものとは違うようで、「で、それは誰なんですか?」と更なる追求の手が伸びる。
「えっと…、特定の方は居ないと思います。
あー…、そうですね。強いて言えば……」
勇姫が天井を見ながら思案すると三人娘は「強いて言えばっ?!」と詰め寄る。息がぴったりだ。
「私の育手、ですかね。老人とは思えない程強くて優しい方でした。尊敬しています。」
明らかに落胆する三人娘。
「勇姫さん、それは恋愛ではないです…」「おじいさんですよね…」「勇姫さんに期待したのが間違いでした…」
やや失礼な事を言われるも、勇姫には返す言葉がなかった。
だが、その落胆も一瞬で、話の火種はまたすぐ燃え上がった。
「強いといえばやっぱり、「「冨岡さん!!!」」」
見事に声を揃える女子達。
先程から何度も名前が上がっていた義勇が、ここで再浮上してきた。
「勇姫さん、冨岡さんは?」「冨岡さんの事はどう思ってるんですか?」「名前で呼んでますし!」
また詰め寄られて、勇姫は困った。
しかし、何か言わないと許して貰えそうにない。
「義勇さんは…」
三人娘が期待する。
「強くて素敵な方だと思います。師匠と同じくらい尊敬しています。」