第6章 内緒
勇姫は藤の花の屋敷を出発し、蝶屋敷に向って走り出した。
勇姫は、移動も鍛錬のひとつと捉えている。
炭治郎に負けず劣らずの真面目人間だ。
しかし、流石に街中を全速力で走ると道行く人からの好奇の目が痛いので、そこはそれなりに加減をしつつ、
山に差し掛かると勇姫は一気にスピードを上げた。
「確か…こっちだよね…」
勇姫は風を切って走る。
岩も倒木もひょいひょいと飛び越えて、なんとも軽やかに走る。
が、負傷前と比べれば、そのスピードはガタ落ちで、勇姫はギリッと奥歯を噛んだ。
「くそっ…速いことしか取り柄がないのに…」
そう呟くが、悔やんでも仕方ない。
また頑張るしかない。
そう自分に言い聞かせ、思うように動かない己の身体を奮い立たせた。
暫く山中を爆走していたが、ザッ…という音と共に、山を抜けた。
額には大粒の汗。
荒い息を整えながら勇姫は周りを見渡す。
眼前に、一面の荒れ地が広がる。
「……はぁっ、はぁ、はぁ、はぁ……、
ここ、…………どこ?」
――――勇姫は、
極度の方向音痴だった。
ひゅぅぅ……と風が通り抜けた。
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はい、勇姫の弱点その1。
方向オンチです(笑)
「確かこっち…」は100%外します。
そして、一人の時はそこそこ口が悪いです。
自分に厳しいので。