第6章 内緒
その日以来、勇姫はよく炭治郎たちの部屋でご飯を食べるようになった。
別々の時もあるので、お婆さんは今まで通り勇姫の部屋に食事を運び、一緒に食べるときは自分たちで男子部屋へ持っていくという形だ。
勇姫の右手はほぼ回復し、箸も使えるようになった。
食事内容も皆と同じになった。
……まあ量は半分くらいな上に、伊之助にあげたりもしているのだが。
今日も朝餉を皆で一緒に食べていた。
善逸が勇姫がまだ会えていない禰豆子の可愛さを熱弁したり、伊之助が無駄に柔術を披露して汁をこぼしそうになったり、楽しすぎて笑いすぎてなかなか食事が進まない。
まあ、いつもの事である。
そんな中、勇姫はふと炭治郎からの視線に気付いた。
「何?炭治郎。」
不思議に思って勇姫は炭治郎に聞いた。
どうやら無意識に見つめていたようで、炭治郎は勇姫問いかけられて初めて自身の行動に気付いてハッとする。
「私の顔に何かついてる?」
首を傾げて勇姫が聞く。
「やだ炭治郎ったら勇姫ちゃんが綺麗すぎて見とれてんじゃん」と善逸がからかい、「なんだそういうことか。それならしょうがないね。」と勇姫がふざける。
「違う!
…いや、違わないけど!」
やや焦った炭治郎がなんだかよくわからないことを言い、「どっち(だ)よ!」と突っ込みが入る。
「…その…勇姫の食べ方が綺麗だなぁって見てたんだよ。」
少し拗ねたように炭治郎が答えた。
「ん?そうかな。」
「うん。確かに、勇姫ちゃんの食べ方は綺麗だよな。箸もお手本かってくらい綺麗に使えるし、背筋もピンと伸びてる。
つい見入っちゃうってのもわからなくはねぇよ。
いつでもお嫁に行けるよ、勇姫ちゃんうふふ。」
勇姫はあまり自覚がなかったようだが、善逸も同意したので、お嫁の部分は無視して「そうかな。ありがと。」と笑った。
「あとさ、勇姫は、字も巧いだろ。
それに俺たちよりもずっと強い。
完璧な人…みたいに思えてさ。」
俺たちよりも強い、の部分に伊之助がピクリと反応したが、
「何か…、弱点とかあるのかなって、考えてたんだ。」
炭治郎の言葉に、伊之助も善逸も黙って勇姫を見た。