第5章 黄色いのと猪と
炭治郎と善逸は部屋で、お膳を並べて勇姫と伊之助を待っていた。
ご飯が冷めないうちに帰ってくる、と勇姫は言ったが、あの伊之助をそう簡単になだめられるとは思えない…
「やっぱり見に行った方がいいかな…」
炭治郎がそう呟いた時、廊下からドタドタと走る音が聞こえた。
すぐに障子が開き、「腹減った!」と伊之助。
ちょっと遅れて笑顔の勇姫が「お待たせしました」と部屋に入って来て、障子を閉めた。
「すげぇ。このわからんちんを、本当にすぐ連れ戻してきた。どんな技使ったんだ…」と驚く善逸に、「秘密です」と笑ってみせた。
「「「いただきます」」」
部屋に三人の声が響く。
……伊之助には、後で注意をしよう。
勇姫のご飯だけ違うことに気付いた伊之助。
「何でお前のだけ飯が違うんだよ。」
何やら気に入らない様子だ。
被り物を外した伊之助の大きな目が、勇姫の鍋を見つめる。
「ああ、私、今利き手が使えないんですよ。
左だと箸が上手く持てないから、匙で食べられるご飯を用意してもらっています。」
ふぅん、と伊之助は言い「まあ俺も箸は使わねぇけどな」と何故か威張ってみせる。「いや使えよ…」と善逸が突っ込むがどこ吹く風だ。
勇姫は土鍋の蓋を開け、お椀に匙で雑炊を何度かすくって入れた。
少し冷めてしまったが、湯気がたっていてまだ温かい。
右手の上がる範囲でお椀を持ち、左手の匙で食べる。
……食べにくそうだ。
それを見た炭治郎は長男力が炸裂し「大丈夫か。俺が食べさせてやろうか。」と、本日二度目のぶっ飛び発言をかます。
これに対して、
善逸は米を吹き出して「ちょ、おまっ、何ほざいてんのまじで」と言い、
勇姫は「大丈夫だよ。ありがとう」と笑顔で平然と切り替えし、
伊之助は善逸の飛ばした米が顔に当たり「おいこらてめえ!」と切れた。
楽しい食事。
やはり、人と食べる食事は格別だなぁと、幸せに浸っていた。
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土鍋、頑張りました!
温かかったみたいです!(*^^*)