第5章 黄色いのと猪と
部屋を出た勇姫は廊下を早足で歩きながら、きょろきょろと猪を探した。
少し行った縁側に座る猪毛を見付けると、ふぅとひと呼吸ついて近付いた。
「ご飯が来ましたよ。部屋に戻りましょう。」
聞こえてないはずはないのに、返事がない。
拗ねているようだ。
勇姫は猪の側に寄り、
「さっきは言い過ぎました。ごめんなさい。」
と素直に謝った。
でも、返事がない。
「炭治郎も善逸さんも待ってます。戻りましょう。」
「…ほっとけよ。どっか行け。」
ボソリと声が聞こえた。
「ほっとけません。貴方と一緒じゃなきゃ、私も部屋に帰りません。
私とずーっと一緒にここに居るか、部屋に戻るかどっちがいいですか?」
そう言って勇姫も猪の隣に座った。
猪は苛ついたようにふんっと鼻息荒く立ち上がろうとした。
しかし、勇姫はそれより速く猪の着物の裾を絡め取り、立つのを阻止した。
「今の貴方は私に勝てなくとも、この先の貴方がどうなるかはわからない。
鍛錬なら、お付き合いしますよ。
お互いの身体が治ったら、ですが。
貴方はきっと強くなる。」
動きを抑えられて、猪は驚いた。
「強くなるには、ご飯です。
しっかり食べたら、強くなりますよ。」
皆で食べた方が美味しいですし、とアイツらと同じ事を言って笑うこの女。
着物から手はもう離されていたが、不思議と立ち去る気にはならなかった。
なぜだか心がホワホワとした。
「…俺が部屋に戻るのはなぁ、お前に言われたからじゃねぇ。
腹が減っだけだ!わかったか!」
「わかりました。それでいいです。」
勇姫は込み上げる笑いを堪えながら立ち上がった。
猪も立ち上がり、勇姫を抜き去り部屋への廊下を走り出した。
顔は見えないが、笑っている気がする。
猪、……伊之助から、もう殺気はなかった。
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仲直り(*^^*)
伊之助も素直な子ですよね。