第3章 語らいの中で
「えっと…隣、座ってもいいかな?」
勇姫の隣を指差しながら、
男の子が笑顔で話しかけてきた。
「どうぞ」
勇姫が答えた。
星を見ている時間。
勇姫にとっては浄化にも等しい時間なので、通常は親しい人であっても邪魔されたくないと思うのだが、不思議と嫌な気持ちにならなかった。
この所ずっと暇で、散々星を見ていたからなのだろうか。
男の子は嬉しそうに勇姫の隣に座ると、草履を脱ぎ、ぱんぱんと足を払い、縁側に胡座をかいた。
ん?長居するつもりなのかな?
がっつり上がってきたぞ。
疑問符は浮かんだが、やはり嫌な気持ちはしない。
「俺は、竈門炭治郎。
ずっとこの屋敷にいる君のことが気になってたんだ。
怪我の具合はどうなんだ?」
この子が「炭治郎」くんか。
伊之助くんにご飯取られてた子…かな。
勇姫は昼間のやりとりを思い出していた。
「…心配してくれてありがとう。
私は巽勇姫。
怪我はだいぶ良くなったよ。」
喋りながら勇姫は自分の言葉に違和感を感じた。
素性もわからない初対面の人に敬語を使わないなんてことは、初めてだったから。
でも、炭治郎に対しては、それが当然であるかの如く、普通に自然と話すことが出来た。
「そうか!それは良かった。」
安堵の表情を浮かべて微笑む炭治郎。
「血だらけの勇姫を冨岡さんが運んできた時は、俺たちも本当に驚いたんだ。
勇姫、顔真っ青でさ。医者がバタバタと……」
「…え?義勇さんが?」
医者が…くらいの時に、勇姫が驚いて声を上げると、炭治郎も驚いた顔をした。
「え、あ、ああ、うん。
冨岡さんが勇姫を抱きかかえて、『早く医者を!』って…慌てて…」
「そっか…義勇さんだったんだ。連れてきてくれたの。」
勇姫は炭治郎から目を離し、庭に顔を向けて頭の中に義勇の姿を思い浮かべた。
思い浮かべたのだが、いつもの無表情な義勇は思い浮かんでも、慌てる義勇の姿はどうやっても思い浮かばなかった。
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やっと進みだしました〜
しばらく縁側が続きます(笑)