第2章 二人乗り<獄寺隼人>
元気をくれるのは、いつも君だった。
2人乗り
すっげぇ、嫌なことがあった。
いらいらして、脳ミソの沸点が上がるんじゃないかと思った。
そんなことを思いながら、錆びたペダルをこぎ出した。
少しスピードに乗ったところで、ふいに何かがオレの背中に飛び込んできた。
「ぉわぁ!!」
心とは裏腹に、軽快にペダルを押していたつま先が息切れした瞬間。
「だらしないなぁ~。」
「うるせぇ。果てろ。」
こんな危ない事するのはコイツしかいない。
いつも隣にいる。
身長もアンバランス。異様にちっちゃいコイツ。
会話もてんでかみ合わないくせに、なぜか一緒にいることが多い。
「隼人!!」
「あぁ?」
「このままチャリで、飛び出しちゃえ!!」
「はぁ?!」
「だって、考えたって、悩んだってしょーがないじゃん!!」
「…まぁな。」
「走り出したら止まんないよ!!このまま明日に向かうんだ!!」
「………。」
「頑張ったって、無理したっていーじゃん!!若いんだから!!ね?!隼人!!」
「…ったく…。しゃ~ねぇなっ!!」
何でわかるんだろ?
オレが悩んでたって。
何にも言わねぇに、今のオレに適切な言葉をくれる。
こういう関係が一番楽だ。
たぶんこの関係の相手が、天竜だからだと思うけど。
でも、そんなこと言ってやらねー。
言わなくても気づくと思うから。