第2章 兄を追いかけて?
それから一年ぐらいたった頃いつものように弟子入りするためにヴァイオリンを演奏していた。
演奏が終わるといつもなら、最後まで聴いてくれない先生がそこにいた。
「先生!最後まで聴いてくれたんですか?」
「明日」
「えっ!?」
「明日の4時にここに来い」
私は、笑顔で返事した。
その日から先生と二人で血の滲むような努力をしてコンクールに参加できるくらいまでの実力をつけ、たくさん優勝した。
兄は、私が優勝すると自分のことのように喜んでくれた。
私が12歳になったとき兄は、原因不明の病によって亡くなってしまった。
亡くなる三日前に兄が言っていた。
「優奏のヴァイオリンは、人を惹き付ける力があるから、俺がいなくなっても演奏し続けてほしい」
そういったあと私に腕時計をくれた。
今、私がつけている腕時計は、そのときのものだ。
兄が亡くなった二年後、先生が世界大会に出ることになり、日本に帰って来なくなった。