第3章 会いたかった人
「あれー?」
ガチャリ、と音をたてて廊下の先の扉が開き、別の男性が姿を現す。
同時に手を引いていた男性が小さく舌打ちが耳に届いた。
「どうして屋敷の中に女の子がいるかは、わからないけどその様子だと、その子逃がすの?もったいないなー。俺、結構好みなんだけど甘い臭いがして美味しそうじゃん?」
近づいてきた男性の舐めるような視線が私の顔を捕らえる。
(美味しそう?どういう意味?甘い香りって私なにもつけてないのに...)
私は、漆黒の男性の後ろに隠れながら考えていた。
「ん~、そんなに隠れなくてもいいのに、でもそういう険しい顔もかわいいね」
(軽い人なのかな?)
私は、なにがなんだかわからなくなっていった。
優奏が困惑していた同時刻。
自席に深く腰を掛けながら揺れるろうそくの炎を見つめていた男性が声をあげる。
「ねぇ?セバスチャン」
「はい」