第3章 会いたかった人
(状況は、よくわからないけどこの人は、嘘をついてないように見える。じゃないときっとこんな真っ直ぐな目をしないと思うから)
男性の目を見てコクりと頷くと、ゆっくりと口元から手が離される。
(でもどうしてこんなことを?)
考えているとほどなくして男性が小さく呟いた。
「行ったな」
気がつくと廊下の足音はなくなっている。
「細かいことを聞くのは後だ。他の奴らに見つかる前にここから出るぞ」
再び静かになった廊下へと出ると男性は、私の手を強く握り、足早に奥を目指す。
(ここを出るって言ってたけどどこに向かってるんだろう?他の人に見つかったらまずいなか?)
不安がないといえば嘘になる。
でも...。
「少し急ぐ。この手、離すなよ」
力強く握られた手から伝わってくる体温は、私の心をわずかながらに安心刺せてくれる。
(私を助けようとしてくれてるのかな?)
この手について行った方がいい気がして頷き返したその時。