第3章 会いたかった人
「何言ってんだ。あさか、この扉を抜けてきました。なんて言わねぇよな?」
「えっ?...そうですけど?」
男性の表情がどんどん険しくなっていく。
「おい、お前一体何者?」
男性は、何かを言いかけたその時、廊下の奥からもうひとつの足音が聞こえてきた。
(他にも人が!)
聞ける人は、多い方が良いと思い声をあげる。
「あのっ!?」
次の瞬間、目の前の男性は、私の口をふさぎ強く体を引き寄せた。
(えっ!?)
カーテンが大きく翻り、その影に二人で隠れるように密着する。
(なっ!何!?)
突然のことに体をこわばらせるとまるで警戒するなとでも言いたげに肩をそっと抱かれ、耳元で低い声がささやいた。
「俺は、お前をどうこうするつもりはない。...だから今は、黙ってろ」
月明かりに照らされてよいやくはっきりとその顔を確認できる漆黒の髪に整った顔そして目の前の大きな瞳は、真剣に私を見つめていた。