第3章 会いたかった人
顔の見えない人に私の髪をかきあげる。
「大人しく、差し出せ...」
「いや.....」
その瞬間はっ、と意識を呼び戻される。
(えっ?今のは何?)
「白昼夢......?」
不安が膨らみ今いる場所から早く逃げたくなった。
(早く戻らないと!)
廊下の突き当たりの壁には、美術館で見た扉と同じデザインの扉がある。
(この扉を通れば帰れるはす!)
扉を開けようとするけどびくともしなかった。
「あれ?開かない...」
何度も扉を開けようとするが開かない扉の前にさらに不安が募る。
「お前そこで何してる?」
「えっ?」
突然聞こえた声に驚きながら振り替えるとすぐ近くに漆黒の髪の男性が立っていた。
(誰?)
目の前の男性は、危険な様子は、ないようには、見えた。
(この人は、大丈夫そう。私以外に人がいてほっとした)
「あの?この扉の開け方を知りませんか?帰りたいんですけど開かなくて」