第2章 兄を追いかけて?
「じゃあ、じっとしていて」
そういうと男性は、優しい手つきでヘアピンを付けてくれる。
(何でだろう...?この人といると落ち着く...)
「...君ずいぶんと甘い香りがするね」
「うーん?香水とかは、つけてないんですけど?」
「へぇ......そうなんだ」
耳元で聞こえた声が一瞬だけ低くなったような気がして男性に視線を向けるけれど...。
「さて、これでいいかな?」
体を離しながらにっこりと微笑まれ、気のせいだったと思い直す。
「ありがとうございました」
「いいえ、俺は、幸運だよ。君がこれを落としてくれたおかげで、君と出会うことができた」
男性は、爽やかにフロアの奥へと姿を消した。
(なんだか不思議な人だったな)
ロングコートの服をマントのように翻す男性の姿は、中世の貴族かもしくは......。
(映画やドラマで出てくるヴァンパイアみたい......)
ふと、時計を見る。