第16章 悪意は伝染する
「肩痛い?…でも謝らないよ」
「はい」
「じゃ、今日は私の部屋で飲もう!」
「まって、ハンジの部屋なんてホコリで息できないよ。私の部屋だね」
「ひどいな、ちゃんとモブリットが掃除してくれてるから問題ない」
「モブリットが不憫すぎるね」
「あの、私は大丈夫です。自分の部屋で、」
ハンジとナナバは顔を見合わせてから揃って笑い出す。
「無理、むり、今日は私たちと過ごそう!客室でさ、なんなら恋バナでも……」
「ハンジ、客室はいいけどさ、あんたのは巨人話だからパス」
2人の掛け合いに思わず笑うとハンジとナナバが優しい顔でティアナにあれこれと話題を提供する。
それが嬉しくてティアナは泣きそうになった。
一旦ナナバの部屋に戻り、待っていた二ファにティアナは感謝を伝えた。
先程の話の中で、二ファが話してくれた事で助けられたんだと、二ファへ無理を通してしまったことを謝罪した。
しんみりとした空気の中ナナバが「さっきの客室話、二ファも来なよ」
ハンジが客室の利用許可を取りに行っている間、ティアナと二ファはナナバの部屋でお茶と菓子を出されゆっくりするようにと言われていた。
(ナナバは急ぎの書類を片付けていたので気が引けた2人だった)
「エルヴィン、入るよ」ノックはなしで一声かけるとなかから、「ハンジか、入れ」と返答があった。
「エルヴィン、4人部屋の客室使いたいんだけど良いよね」
「今夜だけは構わないが、明日に差し障らないように。ティアナにも無理はさせるな」
「わかってるよ、ちゃんと眠れるか見守りたいからね。明日からは忙しくなるし」
「それなんだが…ハンジ。このまま彼らを罰したとしても兵団内でのティアナへのイメージは変わらない。そこで、」
「私の出番だね。分かってるよ。まかせて」
「では頼む」
「了〜解!で、リヴァイはどうすんの?」
「?」
「明日も同席するって言い出すよ、あの様子じゃさ。」
「…これ以上は関わらせない」
「そう。手を打ってあるんだね?」
「やけに気にするんだな」
「私はあんなリヴァイを見たことない。彼、引かないよ」
「……」
「ま、客室の許可はとったからねー!」
言うだけ言って軽やかにハンジは出ていった。
頭を抱えるエルヴィンを残して。