第16章 悪意は伝染する
執務室へ促されたティアナは腕と首に巻かれた包帯、頬が腫れ、唇が切れていて襲われた時に乱暴されたことも一目でわかる状態だった。
執務室へ来る前に話せるかどうかの確認はしていたものの、痛々しい姿だった。
「どうして!相談してくれなかった!」
ハンジはティアナの両肩を掴んで問いただした。
「……」
「黙ってちゃわかんないだろう?!」
「対処できると、思ってました」
「出来るわけないだろ!人の悪意は質が悪いんだ!それこそ心を狙ってくる!」
「ハンジ」
エルヴィンの一言でグッと悔しそうな顔でハンジは言葉を止めた。
「ティアナ」
「はい」
「君の考えも分からなくはない。心配かけたくない。そう考えたんだろう?」
「…」
「結果として君は同僚を好きなままにして傷付くところだった。もしもの場合を考えたか?君だけが苦しむのか?」
「申し訳…ありません」
「明日、彼らとあって最終確認を行う。今日は休んでいい」
「了解、しました」
退室するティアナにナナバとハンジが守るように付き添って行く。ハンジが退室のタイミングでモブリットにナナバが書き取りしたティアナの調書と加害者達の調書を揃えて簡単な報告書の提出を命じた。
「これから、どうするんだ?エルヴィン」
「さっき伝えたままだ。ただ、噂については火消しが必要だな」
「ふむ。」
「おい、その前にアイツらに会わせろ」
「リヴァイ、お前は約束を覚えてないのか?」
「話してる間は手を出すな。だろ。話し中は手をだしてねえ」
はあ、とため息をつきながら、「それは屁理屈というものだ」エルヴィンは窘めるがリヴァイも引かない。
「別に殴らねえよ。牢越しで構わん。一言言っておきたい」
「何をだ」
ミケはエルヴィンとリヴァイの攻防がどうなるのか、じっと見ている。
「あのクソ女にとち狂ってんのも大概にしろと言いてえんだ」
「それこそ必要ないな。何を言っても聞いても彼女達の考えは変わらない」
「……」
「わかったら、お前も下がれ」
憮然としたリヴァイは扉を叩きつけて出ていった。
ミケとエルヴィンはその後ろ姿を見送った。