第49章 対峙
リヴァイが意識を取り戻したのは兵団近くでティアナのいる場所をエルヴィンに問いただしても決して口を開かずにただティアナは無事に保護されているとしか言わない。
狭い馬車で実力行使しようと胸ぐらを掴んでも、罵ってもエルヴィンは反応すら見せない。
今からでもティアナの行き先へ、と気は急いているのに肝心なティアナの居場所はエルヴィンしか知らない。
そしてこの男はそれを言う気がない。
向かい合うエルヴィンの足元も蹴って苛立ちを紛らわせようと何度も蹴るが、エルヴィンではなく、猿ぐつわされ、縛られているエリーだけがビクつくだけでそれもリヴァイの気に触る。
「少しは落ち着きなよ。ほら、補佐官殿が怯えてるじゃないか」
ハンジが呑気な声でエリーをみるが、そんな奴はどうでもいい。今はティアナだけが俺の心を占めている。
「さっきも言ったがティアナはこれ以上はないくらいのところに保護されている。逆に兵団はマークされて危険に晒すことになる。時期がくればティアナに会える。それまで我慢しろ」
奥歯を噛み締め、エルヴィンの言葉を反芻する。
ティアナが兵団にいるとディアナはとっくに知っている。俺が守るとしても兵団の兵士長としてずっと張り付く訳にもいかないことも理解はしている。
だが、複数でティアナの守りを固めれば……
「ディアナは狡猾でティアナに異常なほど執着している。その分、すぐにどうこうしない」
「……あの手紙はなんだ。あれを見てからお前は行動を変えたように見えるが。それはあのカフスにも言えることか?」
せめて手がかりをと思ってたが憎らしいことにエルヴィンは答えずにいる。
体中の血が沸騰しているのにティアナの元へ行く手がかりさえ、この男は与えない。こいつだってティアナに気持ちがあるはずだ。
「テメェはもし……」
鋭い視線でエルヴィンはリヴァイを制する。
「まったく。この兵団には碌な男がいないよね。なぁ、エルヴィン?」
ハンジでさえ気づいているのに目の前の男は動じない。
「まずは兵団内の密通者の取調べが先だ」
エルヴィンの冷めた声にエリーがガタガタと震えている。
自業自得だ。
グラグラ煮立った頭の片隅でそう思っているうちに馬車は兵団に到着した。