第16章 悪意は伝染する
ナナバの私室になんとか着いて待機していた二ファには泣きながら抱きつかれ、ティアナの破れたシャツを見て青ざめた。
「二ファ、温かいお茶とティアナのシャツこっそり取ってきてくれるかな」
「はい…」今は詳しく聞くな。ティアナの背中を撫でてから退室した。
「さて、と。ティアナにはお説教が必要だと思うけど、私より適任が何人もいるからやめとくね。怪我はない?」
「ありません。」
「手首に擦り傷、顔は腫れてる。他には?」
怒ってる。当たり前だ。心配してくれる人達を遠ざけた。
「ティアナ」
「はい。」
「…それ以外は…?」
「お腹を殴られ、胸を触られましたがそれ以上は…ごめんなさい、ごめんなさい…」
少し落ち着いたところでナナバにお風呂に入るように勧められ、いつも爽やかな香りのナナバと同じ香りになっていた。
兵服に着替える前にナナバのバスローブを借りているとちょうど二ファが兵服と甘いミルクティーを持ってきた。
「二ファ、着替え前に手首と首元の消毒をお願い。包帯は多めにね。」
「?!ナナバさん大した怪我じゃ…」
「ティアナ、駆け引きってのは大事。なんだよ」
笑ってそう言うナナバは知らない人のようだった。
「今からエルヴィンに報告する、あとで呼び出しがあると思うからそのつもりでね」
扉を静かに閉じると二ファはナナバの言う通りに包帯を大袈裟に巻き付けた。
「エルヴィン、入るよ」
軽くノックをしてナナバは入室した。
エルヴィンはリヴァイとミケに今後の壁外での役割を話していたがナナバの顔を見て(良くない話だ)と理解した。
ミケはスンッと鼻を効かせ「俺は出たほうが良いようだ」と話の途中ではあったが、早々に出ていった。
いつもの無愛想で腕と足を組んだリヴァイはそのまま部屋から出ようとはしなかった。
「悪いけど出てってくれないかな」
険しい顔でナナバがリヴァイに伝えるもリヴァイは聞く気がない
「こっちは急に呼び出されて話の途中なんだよ」
「それは後にしてくれる?重要なことなんだ」
険悪な雰囲気のなか2人の間に入ったのはエルヴィンだった。
「呼び出しておいて済まないが、今の話はあとで時間を取ろう。」
リヴァイは不服そうだが、チッと舌打ちをしてナナバを睨みつけ出ていった。