第16章 悪意は伝染する
二ファは悔やんでいた。ティアナについての噂が広がっていたのは知っていたが彼女を知っている二ファからすればバカげてるし、狭い兵団の中こうした悪趣味な噂はいつもどこかで話されていた。
だけど、今回はティアナがターゲットで噂も酷い内容だった。
何度もハンジ達に相談するべきと言ってきたがティアナが噂をかき立てるだけだと、余計に広がると相談することを強く止めていた。
でも下品な噂はドンドン広がり、兵団内の空気もティアナが通るだけで嫌なものになっていく。
嘆願、心配、ティアナには明らかに誰かの助けが必要な状況にいた。知らないのは本人だけだ。
本当は知っているけど、知らないフリをしてたのかも。
とにかくなんと言おうと相談はしないの一点張りに二ファは耐えられなくなった。
「ハンジさん、ティアナの事なんですが……」
ハンジもまた、ティアナを心配する1人でもある。
近くにいる二ファならティアナが頑なに隠している”何か”を伝えてくれる。
二ファからの報告を受け、直ぐにモブリット、居合わせたナナバの3人でティアナを探した。
二ファは自分も探すと言ったが万が一の為にナナバの私室に待機してもらった。
人気がなくて大声を出しても問題ないところ。
兵団内には演習場、訓練場、それに付随する施設と多くの場所がある。
3人では捜索しているうちに最悪の事態に陥る可能性が高い。
もっと人員を増やそうにもやたらと増やせばいい訳じゃない。それはティアナを傷つける。それだけですめばまだ御の字だ。良いとは言えないけど命があるなら。まだ、いい。
そこに、キョロキョロと周りを気にしながら条件に当てはまる小屋から3人の女達がでてきた。
確証は無い。だけど、ピンときた。
壁外で培ってきた勘だ。
3人の前に立ち塞がるとあからさまに目を背け、立ち去ろうと必死だ。
「探し人がいるんだけど、知らないかな。だいぶ探してるんだけど見つからないんだ」
にこやかに尋ねるナナバは声も顔も柔和なのに威圧感を当てている。
フルフルと首を振り知らないとジェスチャーする3人に冷たい顔を一瞬むけ、「モブリット、ここだよ」
「そうだよね?」ニッコリと微笑みながらナナバは麻縄を取り出した。