第16章 悪意は伝染する
無遠慮な手がティアナの胸を揉みしだく。
力任せなそれは苦痛しか感じない。
それでも興奮してる男には十分なのか首筋から鎖骨へと舌を這わせては徐々に胸に近づいていく。
いつの間にか両手は麻縄で縛り上げられ、もう1人の男は「早くしろよ!俺も早く楽しみたいんだからよ」
と愚痴っている。
もう、ダメだ。ここで、こんなヤツらに屈するなんて…!
ドカーン!
閉められた扉が勢いよく破られ、光が入ってくると隠微な空気が霧散し、そこには押し倒され、縛られたティアナとのしかかる男、足の自由を奪う男。三者三様の顔が扉に向いた。
「これって同意の上かな?」ハンジが怒りで声を震わせている。
男ふたりは情けないほどにガクガク震えながらコクコクと縦に首を振る。
「そう。そういうプレイな訳?じゃあさ、せっかくなんだから、この娘達も仲間に入れなよ」
ナナバとモブリットに後ろ手に掴まれたトリシャ達が勢いよく投げ込まれる。
その顔は涙でグシャグシャになって床に顔を擦り付き汚れた。
「頑張ったねティアナ」ナナバが上に乗っている男を蹴りどかしティアナにジャケットとマントをかけ、口の中に詰められたハンカチを取り出した。
ティアナがカタカタと震えてるのを抱きしめ「もう大丈夫だから」と優しく声をかける。
「さて、貴方達の言い分も聞きたいけどさ、まずはこの状況から教えてくれるかな」
「ハンジ、ティアナは二ファの待機している私の部屋に連れてくよ」
「くれぐれも他の連中には見られないようにしてくれ」
「…エルヴィンには?」
「呼んできてくれるかな」
「了解」
淡々と進む話に戦慄する5人をモブリットが素早く拘束しハンジはその前に仁王立ちしている。
ナナバはティアナの肩を寄せながら人通りのないルートから二ファの待つナナバの部屋へと歩き出した。
「さて、確かケヴィン班とジョゼルの班だよね」
「「「……」」」
「今、私はかなり頭に血が昇ってる。あなたたちのしたことは私の見たままでいいのかな?」
いつもの飄々とした様子はなく、怒りを通り越して無表情に語りかける。
モブリットはこんな状態のハンジは壁外ですらなかなか見たことがない。
「黙ってちゃ、わからないよ?」