第13章 ヴァイオリン
食事を済ませゲルガー達との楽しい会話もミケがナナバ達を呼び出したので終了した。
(お風呂も食事も終わったし、そろそろ行こうかな)
ティアナは昨夜リヴァイと約束したヴァイオリンを部屋から取りだし、あの場所へと急いだ。
宿舎を抜け出して暗い道にランタンを灯し、いつも通りの時間に着いた。
既にリヴァイは来ていて腕を組んで木で見えない空を見上げていた。
「お待たせ!」
ティアナがリヴァイに言うと「それほど待っちゃいねえよ」と返してきた。
リヴァイの顔を見るとゲルガーが仏頂面と評したことを思いだして笑いそうになる。
「なんだ、ご機嫌だな」
「落ち込んでたけど、リヴァイのお陰で元気になった!」
「…はぁ?」
「んーん、なんでもない」
「なんだそりゃ」
「それよりも!約束したヴァイオリン持ってきたよ」
ケースを持った手をゆらゆらと顔の前で揺らす。
「ギターより小さいんだな」
「そうね、小さいけどギターに負けないくらい素敵な楽器だよ!」
エルヴィンとのやり合ったのをほんの少しだけ忘れ、さっそく木箱にランタンを置いてケースからツヤツヤした深みのある茶色のヴァイオリンを取り出す。
「見たことねえ、楽器だな」
「初ヴァイオリン鑑賞ね」
にこやかに笑うとリヴァイは「そうだな」と一言。
音を一音ずつだして弦を調律する。
「その右手のはなんだ?」
「弓って言ってこれを弦に当てたり弾いたりするの」
「なるほどな」
他愛のない会話をしているうちに調律も終わり音階を確認し自分だけの曲を奏でる。
初めはスロー、メロディを作っていく次第に弾く音が滑らかに強くなっていく。
(音が降りてきた)
指は勝手に動き弦を弾き弓を引く。
激しいメロディから、またスローに。終わりに向けフェードアウトする。
一曲引き終わると息が上がって肩で息をして整えてるとリヴァイと目が合った。
リヴァイはいつもの仏頂面は驚きの表情に眉間のシワもなくなっていた。
しばらくしてから、ティアナは訊ねた。
「どうだったかな?」