第13章 ヴァイオリン
エルヴィンとやり合った後ティアナは悲しい悔しい、腹立たしい気持ちでいっぱいだった。
自分を否定された。ティアナ・ディーツとしてではなくエルヴィンにとっては、いつまでたっても資金援助の為の存在なのだ。
次第に怒りが沸々と湧き上がるが、何処にも持っていきようもない。目の前に誰かいたら八つ当たりしそうだ
(少し頭を冷やそう)
気分は最悪だがシャワーで何もかも洗い落としたい。
着替えと石鹸を用意して大浴場へ。
大浴場は比較的に空いていた。
お気に入り石鹸の香りは、ささくれだった気持ちを落ち着かせた。
シャワーが終わる頃には大分マシな気持ちになり、夕食のメニューはなんだろうと能天気なところまで回復した。
食堂は丁度人が集まる時間帯で食べ終わって仲の良い同士で食後のお茶を飲みながらワイワイと賑やかな雰囲気だ。
トレイを持って配膳をし、席を探していると「こっちおいで」とナナバさんとゲルガーのテーブルに呼ばれた。
「何だか久しぶりのティアナと食事だね」
柔らかく中性的なナナバさんは男女問わず人気が高い。
「最近は班のヤツらか、あの仏頂面と一緒だからなぁー」
豪快に笑うゲルガーは既に酒瓶を手にしている。
「今日は一緒にご飯で嬉しいです」
「班のヤツらはともかく仏頂面は相変わらずの仏頂面で食べてったぞ」
口元に手を添え笑いを堪えるナナバが会話を引き取る。
「一人で静かに食べてたんだけどゲルガーがちょっかい出して睨まれてたよ、あれは見物だった」
その様子が簡単に予想ついて思わずティアナも笑いながらゲルガーの方を見るとバツが悪いのかナナバに「黙ってろよ」と負け惜しみの言葉をだす。
「ゲルガーったらさ、睨まれてオドオドしちゃって"悪かった"って謝って…」
「おいっナナバ!それ以上言うな!酒やらねえぞ!」
「いや、酒はいらないよ、ゲルガーの顔だけで楽しかったからね」
もうこんな感じでさ。と説明するナナバをゲルガーが止めようとするがナナバは意に介さず続ける
ナナバと一頻り笑うとゲルガーは一言
「すっげー怖ぇんだよ、あの仏頂面。せっかく仲間に入れようと思ってたのによ、"うるせえ、飯の邪魔だ"だぞ?!」
リヴァイらしいと想像してティアナは笑いながら食事を摂った。