第11章 夜の帳と命令
「リクエスト?」
「うん、何かない?」
急に何かないか、と聞かれても困る。というより、あまり歌とか分からねえ。
黙っているとティアナは今か今かと待っている。
「リクエストなんか、ねえよ。さっき何を歌ってたんだ」
「オリジナルなの」
「なら、それでいい」
ぶっきらぼうにティアナに言うリヴァイは気づいていない。
来た時は切ない、悲しい、寂しいに包まれていたのが次第に穏やかなものに変わったことを。
「あの歌は、、」
「はあ?リクエストつったろうが」
「同じのはヤダから、別ので。」
「めんどくせえな。お前の歌いたいもんでいい」
「じゃあ、、これかな」
明るくテンポのいい歌を身振り手振りを交え歌う
(イザベルが興奮してたのもムリねえな…)
「どう?この歌」
「ああ、悪くねえ」
それを聞いてティアナはプッと吹き出した。
「初めて聞く感想っ!リヴァイ、面白い!」と笑っているが悪くない。と思ったから言ったんだが、と2人の間に緩やかな空気が流れた。
「なあ、ティアナ。」
「なに?」
「俺もここでティアナの歌、聞きに来てもいいか?」
キョトンとしたティアナはリヴァイの願いに即答した。
「もちろん!」
「ありがとな。」
そっぽを向くリヴァイは多分、照れている。
普段が無表情で怖い雰囲気を出しているけどとても繊細で優しい人。
「ニヤニヤしやがって気持ちわりい」
追加。口が悪すぎる。
そろそろ終わりの歌を歌ってお開きにしないと就寝点呼に間に合わない。
リヴァイから少し距離をとって息を整える。
「♪Auf Wiedersehen bis zu dem Tag, an dem wir uns wieder treffen…」(さよなら、いつかまた会えるまで)
物悲しいが余韻を残し響く声はさっきの明るい声ではなく切なる願いを歌った。
ティアナが胸に手をそっと置き、瞑っていた瞳を開いた時、フワリと風が通り過ぎた。
「さぁ、帰りましょうか」
「そうだな」
「明日は楽器持ってくるね」
ティアナはニコリと笑う。
「ヴァイオリンってのか?」
「そう!そっか…」
「…イザベルが褒めてた」
「うん、よかった。なんだか照れちゃうね」