第10章 日常
救い主はきっちりと分けた金髪とスカイブルーの瞳の持ち主、エルヴィン分隊長。
「ハンジ、私の執務室に一緒に来なさい。」
「えー、なんで。行きたくない。」
「班長!我儘言わないで下さいっ!」
モブリットが諌めるも「嫌だね」と子供の様に駄々をこねる。
「ハンジ、命令だ。」
「すぐ、それだ。わーかった。行くよ、行けばいいんだよね!」
モブリットが安堵の息をつき、ヘロヘロになっている班員に解散を告げる。
(((ありがとうございますっ、分隊長、モブリットさん!)))
心の中で感謝の気持ちがシンクロする班員はハンジの目を見ないようにしながら脱兎のごとく兵舎へ戻った。
「もう、動けないーなんて言ってたじゃん…」
「ハンジ行くぞ」
「はいはーい。急かすなよ」
「分隊長、班長、お先に失礼します」
こうして合同訓練はなんとか終了した。
訓練に次ぐ訓練で汗だくになった体をスッキリさせようと二ファ達と浴場へと向かう。
浴場入口でシャワーが終わったジョゼル班の女性兵士がドンっとぶつかった。
「あ、すみません。」
ティアナは謝るが相手はティアナを一瞥して不機嫌に浴場から出ていった。
「なに、あの人。感じ悪いな。」二ファが言うと
「訓練後で気が立ってたのかな?それより早くお風呂入ろうよ」
ティアナは頭の回転は早いし人の感情の機微にも鋭いが、恋愛が絡んだ好意、悪意には鈍感だ。
今のだってワザとぶつかってきたのが見え見えだったのに本人は気づいてない。それがティアナの良いところで悪いところ。ハンジ班の総意だ。
ティアナはハンジ、ナナバ、ミケ、エルヴィン等、古参兵、役職付きにも可愛がられてる。
それが嫉妬になって意地悪されてるのだ。
最近は無表情で何を考えてるか分からないリヴァイがティアナに構っているのも原因のひとつだが、本人が苦にもしてないし、気づいてないなら今は見守るのがいいのかも知れない。
考え込んだ二ファに早く、と急かすティアナに「はい、はい」と生返事を返しながら脱衣場からシャワールームへ。泡立てた石鹸で髪も体も包んで一息ついた。