第10章 日常
「ふぅー、疲れたあとのお風呂は格別だね、二ファ」
「ティアナ、それオヤジよりヒドイ感想だよ。おっさんだよ」
「おっさんでも良いじゃない」
「女子、可愛い女子なの!私達は!」
「ごめん、ごめん、二ファは可愛いよー!」
「全くティアナだって綺麗なんだよ、本当に」
浴場から出る時の何気ない二ファとの会話は気を張らずにいられる。このなんてことない会話も大切な時間だ。
二ファやジェンに談話室でお茶しようと誘われたけど、これから私にとってお散歩の時間。
申し訳ないけど、またね、と断り部屋に戻って着替える。二人部屋だった、この部屋は一人部屋になってしまった。彼女は私のお散歩を知っている数少ない人だった。強く優しい人。壁外で散った人。今も彼女がそこに居る気がする、大切な友人。
何故か、仲良しの二ファにもお散歩については話せないでいる。
きっと心配して危ないからって止められるのがわかるから?それとも知られたくない人にも知られてしまうから?
浮かんでくる考えを遮断して、夜に溶け込む服を着る
黒のジャケット、くすんだモスグリーンのシャツに黒いパンツ。
女子棟出入口は勿論、出入りを管理する人がいる。
正面切っては出ていけない。幸いにも私の部屋は一階で出入口からは離れている。
こそ泥になった気分になるけど、音を立てずこっそり窓から出る。後はいつもの場所に行くだけ。
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戦勝祝いだ!と無理やり酒場に連れてこられた。
子供のように駄々こねるのを相手するのが面倒になって流された。
カイって奴は騒ぐだけ騒いで潰れている。
さっきまで無駄に絡んできて子守りの会じゃねえか
ジョゼルはゲルガーと飲み比べで忙しいらしい。
俺が帰っても全く問題ない。この場は出来上がってるからな。誰の目にも止まらないように酒場の扉を引くと化粧した女が俺の腕の裾を握って引き留めようとする。
「どこ、いくのぉ」
男の絡み酒も嫌いだが女の絡み酒はもっと嫌いだ。
「ねぇ、二人で抜けない?」
ワザとらしく耳元で誘う女。名前も知らんが近頃やたらと俺に付きまとう女だ。同じ班だったのか。
こいつに全く興味ない。誘いに乗る気もない。
「離せ、俺はお前に興味はない。他をあたれ」
後ろでなんか言ってるが気にすることも無く騒がしい酒場を出て兵舎への道を進んだ。