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君がそこにいるならば【進撃の巨人/リヴァイ】

第48章 開幕のベルを鳴らせ


 ティアナは馬車の外を見るとディアナのときとは違って護衛は多い。しかも人質のディートはナイフを突きつけられても余裕を崩さない。一度だけのチャンス。下唇を噛みナイフを引こうとした瞬間。
 ディートから肘鉄をくらった。
思わず呻くとすぐさまナイフを取り上げられる。

「巨人は殺せても人は殺せないよね」
クスクスとディートは笑いながらティアナが他に凶器になりそうなものを持っていないかをチェックしている。
 普段の兵団服と違ってドレス姿で隠し持てるのはナイフ一本がせいぜい。ためらったことで簡単に捕らわれた。


※※※

 馬車を降りると懐かしい建物が見えてきた。
夏の避暑できた別荘。ここには優しい思い出が残っている。

「懐かしいね。僕もここにくるのは久しぶりなんだけど、ちゃんと快適に過ごせるようにしてあるから心配しなくても大丈夫だよ」

 そうじゃない。と言いたいがここから馬を奪っても夜の暗闇のなか走らせるのは危険だ。

さぁ。と促され別荘に足を踏み入れると寸分たがわずの内装、敷物、家具。よく飾られていた花まで同じでディートの執着がそこここに見える。

「そのドレスじゃ休めないから着替えておいで。部屋はわかるよね」
 
 ニコリと指し示したディートは執事に案内させ、自分はリビングで淹れたての紅茶を飲んでいる。

 案内、監視つきでかつて使っていた部屋で動きづらいドレスから用意されていた簡素な服に着替える。
ノックがされ先程の執事だろうか、下でディートが待っていると告げる。

 リビングではソファにゆったりと体を預けリラックスしたディートがティアナの姿を見ると深夜にも関わらず使用人にお茶のおかわりを言いつけている。
 ソファの向かいに座ると柔らかな座り心地に兵団の固い椅子と比較して心の中で苦笑した。

 今頃、リヴァイたちはどうしているだろう。
ディアナを追っているならここにたどり着くのは難しいだろう。
顔に出ていたのか、ディートは天気の話しをするような気軽さで語り始める。

「彼らの心配をしているなら大丈夫。ちゃんとここに気づくからさ」

訝しんでいると面白そうにティアナがディートの意匠のついたカフスを落としたことと、予め手紙をおいていたことを告げた。

「攫っておいてどうして……」

「攫う?人聞き悪いな。彼らとは話さなきゃいけないからね」

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