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君がそこにいるならば【進撃の巨人/リヴァイ】

第48章 開幕のベルを鳴らせ


馬車はスピードを徐々に落として止まると馭者がディアナを下ろし、私は護衛の男が腕を強く掴んで引きずられるように下ろされた。
目の前に小さな家があるが、周りには平坦な草原しかない。

(足で逃げるのは無理か。なら馬を奪ってなら……)

「案外、早かったね。もう少しかかるかと思ってたんだけど」

ドクン。強く打った鼓動のあと心臓が止まった気がした。

「やあ。とても久しぶりだ。アーリアと呼んだほうがいい?それともティアナかな?」

……ディート……どうしてあなたがいるの?


「感動の再会といきたいけど、私、次の予定もあるから時間の余裕はないのよね。とにかく一旦はディートに任せるから。絶対に逃さないで。裏切ったらどうなるかはわかってるでしょ」

「はいはい、まったく。このお姫様は疑い深くて困るな。僕が加担する理由は教えたでしょ?」

戯けてディアナに言い切るディートは私を見てニヤリと嫌な笑みを浮かべる。

「そうね、あなただってアーリアをこれ以上は野放しにしたくはないものね。じゃあね、すぐに戻るから大人しく待っててね」
優しさを感じさせる声をかけながらきれいに手入れされた爪で頬を撫でてディアナと護衛は出ていく。
馬車が遠ざかる音だけがこの場に残った。


「やっと逢えた。ゆっくり思い出話をしたいところだけどきっと今の仲間が必死に探してるよね。ディアナはつけられてないと自信持ってるけど念には念を入れておくのがいいかな」

「ディート、どうして」
「どうして?妙なことを聞くんだね。ずっと探してたよ、ずっとね。理由?今更だよ」

先程の嫌な笑みではなくとてもうれしそうな笑顔が逆に恐怖を煽る。ディアナに私を殺すより飼い殺しを提案したのはきっと彼。
捨ててきた過去がどんどん濃く私を包んで動けなくする。

「ティアナ、って呼ぶね。疲れていると思うけど馬車に乗るから、もう少し頑張ってくれるよね。後でゆっくり出来るから。」

エスコートするように手を伸ばすディート。

長いこと履いてなかったヒールに躓いた振りをするとディートが受け止めてくれた。勢いで服にしがみつき袖のボタンをうまく引き千切った。
「ほら、大丈夫?」
気遣うディートを無表情で見返しながら支えに腕を掴んだ。

この家の裏から出る前にドレスの線に沿ってソッとボタンを静かに落とした。

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