第48章 開幕のベルを鳴らせ
「そろそろ着くわよ」
終始楽しそうに語る声が疎ましい。
馬車もスピードが緩んでおり、ディアナの目的地がもうすぐなのだろう。
※※※
「ハンジ、後は任せたぞ」
「はいはい、それより隣が怖いことになってるよ」
「……」
馬車でハンジがエルヴィンに答えている間もリヴァイの殺気立った視線を向けられているエリーが気の毒になってしまうほど青ざめている。
(ま、自業自得か)
ティアナが会場から消え、それを知っていたかのようなエルヴィンに先導されて乗り込んだ馬車はどこに向かっているのかすら知らないけどエルヴィンの言葉からするとエリーを確保するのが私の任務だな。
「エルヴィン」
「落ち着け」
やっぱり。人が悪いにもほどがある。この様子だとリヴァイにも何も知らないんだろうな。
「エルヴィン。お前、わかってんだろうな」
低く籠もった声は視線を同じく殺気を纏ってる。視線向けられてるエリーが震えながら何かを訴えようとしてるけど止めといたほうがいいんじゃないかな?正直私も怖い。
「あ、の」
やっちゃった。エリーが小声で口を開いたらリヴァイは元よりエルヴィンの無表情の視線が向いてる。
「エリー、君は状況が理解できていないのかな」
カタカタ震えるエリーに今度は微笑んでるけど目の奥は笑ってない。
エリーは口を噤んでうつむいた。最初からしなけりゃいいのに。
「で、私たちはどこへ向かっているのかくらいはそろそろ教えてくれても良いんじゃないかな」
馭者がうちのモブリットと気づいた時から何か企んでいるとはわかってたけど肝心のリヴァイに知らせてないとはね。うん?下手に知らせたらきっと暴走するか。
剣呑な空気が漂うなか出来るだけリヴァイの視線を受けないよう口数を減らしているんだけど、これだけは聞いておく必要がある。
「ティアナが連れて行かれた場所は絞り込んである。そこにはティアナの助けになる人物も待機している。安心しろ、ディアナはティアナを殺さない」
「その根拠はなんだ」
エルヴィンを睨みながらリヴァイは問い詰める。
「簡単な心理だ。殺すよりも手元で甚振りたいと計画している」
「全然安心できないんだけど?」
「だから今後の憂いをなくす為に半分乗った」
相変わらずの博打にいつかリヴァイに殺されないか心配だ。