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君がそこにいるならば【進撃の巨人/リヴァイ】

第48章 開幕のベルを鳴らせ



 揺れの少ない車内の空気は張り詰めている。
ディアナは自分の髪をクルクルと指に巻きつけ笑顔を浮かべている。
 できるだけ側にいて欲しくない。
距離を取ると奥に座ることになる。
 近くにいるディアナの肩から伝わる体温に堪えられず奥にずれて外を眺めようとカーテンを開けようとするもディアナに止められる。
 言うことを聞く義理はないと勢い良くカーテンを開け、通り過ぎる景色で何処へ向かうのかを考える。

 その間もディアナは昔話をしては一人笑っている。かつて一緒に舞台に立った充実感を語る。
 (何を今更。貴女がした仕打ちを忘れたわけじゃない)

 「一人で話すのも疲れるわ。せっかくなんだし話し相手になってよ」

 無視を決め込むティアナを責めるようなディアナの言い草に怒りを堪えられず衝動的に言い返した。

 「自分に都合の悪いことは忘れる便利な頭なの?貴女が傷つけ、追いつめた仲間を嗤った貴女と話すことがあると思ってるならお目出度いにも程があるわね」
 一気に捲し立てるとディアナは一瞬きょとんとしたが次の瞬間には妖艶な笑みで見つめてきた。

 「ああ。そんなこと?だってそうでもしなきゃ絶望してくれないでしょ?本当は死んでくれてたら良かったんだけどね」
 「アーリアは死んだ。理解できないの?」

 聞き分けのない子供を諭すようにディアナは優しげに答える。
 「わかってないのはあなたよ。いくらアーリアは死んだ。と言い張っても実際あなたは生きてるじゃない。生きてるならいつだって戻れる。だから別の方法にしなきゃね」

 自分がしたことになんの罪悪感も感じず成功してもなお満たされない彼女。
 ゾワリと鳥肌がたった。
今度こそ目の前で死ぬのを見届けたいのか。

 それ程までに憎んでいるのか。憎まれ続けているのか。

 沸々と怒りが湧き暴れだしそうになる。
自分が目障りだったなら自分だけにその憎しみを向ければいいものを周りを巻き込んだ。
そして今もそうしようと企んでいるのか。

 ティアナの怒りに気づいているはずなのに逆撫でするように今度は傷つけた仲間の近況を語り始めた。

 「そうそう、貴女が目をかけてた子だけど今は私の付き人してるわ。使えなくってウンザリしてるけど放り出す訳にはいかないもの」

 ティアナは絶句した。
すべてを捨てても終わってはいなかった。

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