第48章 開幕のベルを鳴らせ
ティアナのほうを示す手を周りの目が追いかける。
ザワザワと次第に広がっていく。
俺を含めハンジもエリーでさえも驚きを隠せない。ただエルヴィンだけはどうにも読めない表情でティアナを見ている。
視線に囲まれたティアナがどうするかを好機の目でみている。
微動だにしないティアナをそのまま会場から連れ出そうと踏み出すとティアナはしっかりと前に歩みだす。周りは左右にわかれて道ができる。そして壇上に上がる。会話を交わしているが何を話しているかは聞こえない。
※※※
「久しぶりね、ディアナ。どういうつもり」
「あなたを戻してあげるだけよ」
「もうアーリアは存在しないの」
「ここで話しても仕方ないわ。せめて一曲くらいは付き合ってくれないと、ここの皆様は納得しないわよ」
ここまで笑顔で話してはいるがその会話には棘がある。
壇上から見渡すと期待と半信半疑の顔にぶつかる。
アーリアの舞台は見て無くても、突然の引退話は聞いたことがあるのだろう。
「どうする?」
「……わかった」
ディアナが手を振ると楽団が譜面を変え前奏が流れ始める。
ティアナは目を閉じた。この曲はかつてディアナとティアナがよく歌った曲だ。
本来なら音階をたどり喉のウォームアップをするがスッと曲が馴染み声が出る。
そこにディアナの声がついてくる。ソロでも素晴らしいと歓声があがったがデュエットになるとその迫力、華やかさが倍になる。
曲の半ばでティアナの声のトーンが落ちたように感じたがすぐに元に戻り、歌いきった。
ディアナはティアナと向かい合い笑顔をみせる。一方のティアナは固い笑顔を振りまき、この突然の舞台を見て聞いた招待客は惜しみない拍手と称賛があがった。
「今、降りたらもみくちゃよ。出るなら後ろのドアね」
無表情なティアナの肩を優しく掴んでディアナは歓声に応えながら後ろへと下がりドアの向こうへ消えた。
エルヴィンは今にも駆け出そうなリヴァイについてこいとサインを出すとギリっと奥歯を噛み締めながらエルヴィンを先頭に会場を静かに退場した。
リヴァイ、ハンジは無言でエルヴィンについていくがエリーは訳がわからなかった。わかるのは自分がまずい立場になったことくらいだった。