第9章 壁外調査の後
宿舎の浴場より整理整頓されたバスルームで兵服を脱ぐと嫌でも洗っても落ちない汚れが目につく。とりあえず畳んでから少し熱めの湯を頭から浴びると体が解ける心地良さに息が漏れる。
爽やかな香りのシャンプー、ボディーソープと種類があって宿舎の浴場より落ち着ける気がする。
身体を流し終えてドアを開けると微かに紅茶の香りがする。何故かまた余計なものが流れそうで強く目を瞑る。
______
このゲストハウスはあまり使われることはないけど視察や(ごく稀に)出資者の方の滞在時に利用される。
いつでも利用できるように当番で清掃や備品のチェックしている。
何度か私も当番に当たったから部屋の数、間取り、どこに何があるかは把握済。
ハンジさんが詰めたリュックには水筒、茶葉の缶の他に袋に入ったパン、チーズ、りんご、スキットルに入ったお酒まである。
(ここで食べなさい、ってことかな。)
食器棚からティーセットとお皿を出して、まずは紅茶を丁寧に淹れパンにチーズを添えたところでリヴァイさんがバスルームから出てきた音がした。
「リヴァイさん、お茶が入りましたよ。」
「……」
さっきまで座っていた位置につき、テーブルに置かれたティーセットとパンとチーズなどの皿をみる。
「この紅茶、いい香りですね」
向かいに座ったティアナがポットからカップに注いでリヴァイの前にコトンと置いた。
「?」ジッとティアナを睨むリヴァイに首を傾げる。
「お前は、、なんでここにいる?」
「このお茶や食べ物も全部ハンジさんが用意して強引にここへ行くようにって。」
「そうか。…さっきの事だが」
「ゆっくりお茶してたと報告します。」
「 助かる。」
「じゃ、冷めないうちに。食事もどうぞ」
変わったカップの持ち方でリヴァイが紅茶を飲み始めるとティアナは少しだけ安心した。
特に口数が増えることもなく、紅茶のおかわりを入れる頃には静かに夕暮れが近づいてきた
「明かりつけますね」
パタパタといくつかのランプにマッチで火を灯すと橙色が優しく揺れる。
「付き合わせて悪かった、そろそろ戻れ」
ティアナが来てからだいぶ時間が経っているのに気づいたリヴァイはティアナに突き放すように言うが
「押し掛けたのは私ですよ、それに多分もう少しで…」