第48章 開幕のベルを鳴らせ
馬車から降りるのを手伝い、明るいのに魑魅魍魎が跋扈する会場でほどなくエルヴィンらと合流する。エリーは目を見開き、一瞬、憎々しげな顔をしたがすぐに取り繕った。
「すごいきれいだわ。私も同じようにしたかったかも」
ふざけんな。いくらお前が着飾ろうと性根の悪さは表にでるだろうよ。
はっきり言葉で表せない分、心の中で罵声が響く。
ハンジも騒いではいたが俺の視線で黙りエルヴィンはいやにご機嫌な顔をしてやがる。
こいつら。今夜なんの為にきたのか忘れちゃいねぇか。
鋭く睨むとエルヴィンが両手を上に広げて少しくらい見惚れたって減らないだろう。と言ってるが減る。確実に減る。それでなくても神経が過敏になっている。
限界を超えたらこの場所からティアナを連れ出してしまいそうで緊張感のない面子に苛立ちながら立っているとメインホールで邪魔にならない程度の音楽が聞こえてきた。
次第に集まってきた連中に挨拶やら何やらしながらも鼻につく香水に軽く頭痛がする。
エルヴィンが俺たちを紹介しているが何人かはティアナにチラチラと何度か視線を向ける。その度に卒なくティアナは対応し堂々としている。
その時、音楽が鳴り止みホール正面に出張ったスペースにでっぷりと肥えた男がグラスにスプーンで何度か叩き涼やかな音でホール中の視線を集める。
「今夜はお集まりいただき光栄でございます。皆様に満足いただける料理と酒をたっぷり用意しております、また今回は特別な趣向を凝らしておりますので楽しみにお待ち下さい。」
そういうと手にしているグラスを掲げ夜会が始まった。
基本的にティアナは俺たちの側で挨拶にくる相手やこちらから出向く相手にも挨拶している。ハンジやエリーもいるがどうしても団長であるエルヴィンや俺に知らねぇ奴も次々と集まっては去って行く。
あからさまにティアナ、エリー、ハンジにも甘ったるい言葉をかけては強めの酒を勧めてくるのもいるがなんとか躱しているようだ。
これまで出席した夜会で何度かあった女が寄ってくるがこっちもエルヴィンと二人でうまくあしらう。
ここまでは通常の夜会と同じ流れだ。そこに真っ赤なドレス、顔を強調する化粧をした女が挨拶にきた。
その女をみた途端、ティアナの表情が曇った。